平成26年度運動方針
Ⅰ.はじめに
戦後60年余りも続いた自民党を中心とした政治姿勢に国民は疲弊し、規制緩和とバブル崩壊を引き金に、地方と中央の格差問題、高齢化社会を迎えた中での様々な弊害により、国民は新しい風を期待し、民主党へと政権交代がなされたが、余りにも稚拙で国民を顧みない姿勢に、裏切られた思いが募り、一昨年12月に行われた、第46回衆議院議員総選挙において、自民党政権を国民は選択し、僅か3年3ヶ月で民主党は下野されることとなった。
「危機突破内閣」と銘打った第二次安倍内閣が発足した。総理経験者や、総裁選で戦った候補達を就任させるなど、敵味方の無い融合色を強く全面に出した、盤石な体制を強調した内閣である。経済再生を最優先とする今次内閣は、デフレ脱却のため「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の3本を柱に、「アベノミクス」なる経済政策を打ち出した。金融緩和と財政政策により、大手企業を中心に景気は回復基調のように見られるが、そのほとんどが円安為替による貿易黒字が大きな要因であると考えられる。
また、農業においても「攻めの農林水産業」と成長産業に位置づけ、10年間で担い手に耕作地の8割を集中させ、6次産業化を推進し農業・農村の所得を倍増させ、農産物輸出を1兆円に押し上げるとした「農林水産業・地域の活力創造本部」を立ち上げ、規制改革委員会農業WGと産業競争力会議農業分科会で提言書の取りまとめを行った。
特に、規制改革委員会農業WGでは、耕作放棄地を集積し大規模農家や企業に貸し出す「農地中間管理機構」を中心に、農業委員会や農業協同組合など既得権益に対する改革を提言した。産業競争力会議農業分科会では、それらを含め、経営所得安定対策を見直し、真に競争力ある農業を実現するため意欲ある関係者に開かれた仕組作りを提言した。
世界経済は、平成20年の世界金融危機以降緩やかに回復を続けてきたが、南ヨーロッパを中心とした政府債務問題を背景に、ヨーロッパ経済の弱さが一層鮮明となり、中国など新興国にも影響を与えたが、おしなべて緩やかに回復傾向と言える。
米国においては、雇用環境の改善は依然スローペースであるが、消費の回復は進んでいる。しかし、オバマ大統領の社会保障制度改革を巡り、議会との対立が続く中、先行きの不透明さから企業の設備投資は伸びず、企業の内部留保が急増している。これらの事から米国企業は確実に力を蓄えてきており、TPP交渉でも強力に米国政府を後押ししてくるだろう。
ヨーロッパの農業政策は、ユーロ圏の経済の落ち込みを背景に各国の社会不安から、以前ほど自国の食料供給の為に農業を保護しなければならないと言う国民意識が薄れつつあり、政策自体に批判的な動きもあると言うが、すでに国内法で農業所得が補償されていることには変わりなく、日本は早急に欧州型所得補償制度を手本とすべきである。
また、昨年は老舗または高級と言われた複数の外食店・外食産業において、食材虚偽表示が横行した。それぞれの立場で弁明を繰り返していたが、消費者不在の利益優先の思いを払拭するには至らない。食料を生産する我々が、如何にルールを守っても意味がないのかと思うと憤りを抑えきれない思いである。ユネスコの世界遺産に日本食が登録されたことを機会に、日本人が再度、国内で生産された食材による日本食の在り方を考え直す良いチャンスでは無かろうか。
さらに、安倍内閣が肝いりで作った、財界からの民間議員で構成された規制改革委員会や産業競争力会議は、如何に自分たち企業が儲かる仕組みを作るかばかりで国民不在も甚だしい。気が付けば優良農地は企業が占有し、安倍総理が守ると言った「美しい日本の原風景」が中山間地に残るだけではないのかと不安を覚える。
本年は、5年ごとに見直される「食料・農業・農村基本計画」を検証する大事な一年であり、産業競争力会議は6月までにさらなる農業政策の見直しを行うとしている。これ以上現場を理解していない民間議員に農業政策を改悪されぬよう、農業者が将来に渡り安心して営農が続けられ、消費者に安全安心の農畜産物を供給出来るような政策の実現に向けての運動を展開していかなければならない。
以下、諸対策を列記する。
Ⅱ.農政対策
1.TPP対策
前政権時に唐突に出された「TPP交渉」であるが、自民党は先の衆議院選挙のマニュフェストで「聖域なき関税撤廃が前提であれば交渉参加に反対」として選挙を戦い勝利した。
しかし、第二次安倍内閣は経済再生を最重要課題とし、国内対策と共にFTA・EPA交渉など海外貿易を重要視していた。TPPについても日米首脳会談の中で交渉参加の是非を判断したいと前向きな姿勢を伺わせた。
与党は、2月13日自民党外交・経済連携調査会を開催し、「TPP交渉参加に関する基本方針」として、①聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加反対、②自動車等の工業製品の数量目標は受け入れない、③国民皆保険制度を守る、④食の安全安心の基準を守る、⑤ISD条項【注1】は合意しない、⑥政府調達・金融サービス等は我が国の特性を踏まえる、の6項目をまとめ、厳守を強く首相に申し入れた。さらに、「TPP参加の即時撤回を求める会」も、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖等の農林水産物の重要品目の除外」など6項目を求めた。また、民主党を中心とする野党議員で構成する「TPPを慎重に考える会」も断固反対を訴えた。
しかし、2月22日安倍首相は日米首脳会談後、「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」と明言し、政府の専権事項として早期に判断するとした。その後与党は、外交・経済連携調査会を本部に格上げし、下部組織として「TPP対策委員会」(西川公也委員長)を組織し、選挙公約である6項目の遵守や聖域が確保されない場合は、脱退も辞さないものとしたが、交渉の参加判断は総理に一任された。
3月15日、安倍首相は官邸において日本経済再生本部を開催した。TPP関係閣僚会議を設置し、同日首相はTPP交渉参加を正式に表明した。民主党政権時でもこれほど拙速には事が進まなかったものが、支持率の高さを背景に、いとも簡単に物事を推し進める非常に危険な内閣である。
米国議会の承認後、7月の交渉終了間際より交渉に参加した日本は、以降イニシアチブを取ろうと必死であったが、その後の各回の閣僚会議や交渉会合では、各国の思惑、特に米国とシンガポールやベトナムなどの新興国との間で、知的財産や環境、内国優遇で反発が強く、また、物品市場分野でも対立が続き年内妥結を見ることなく年を越した。
さらに、米国においてはオバマ大統領のTPA【注2】(大統領貿易促進権限)が失効したままで、現時点でTPP合意には議会の承認が必要であり、ねじれ議会のオバマ政権にはウィークポイントと言える。
しかし、年明けより交渉は再開され、TPAについても議会が承認する動きもあり、さらに米国が関税分野などで譲歩案を突きつけてきた場合、日本も譲歩せざるを得ないと考えられている。最終的には国会での批准がなければ交渉締結とならないが、与党議員が6項目の遵守や聖域の確保が無い場合反対決議が出来るのか、党議拘束が掛かれば如何ともしがたいと考える。
安倍総理は一次産業では3兆円のマイナスだが、経済全体では3兆2千億円のプラスだとして経済再生には不可欠としたが、それは10年間で2千億円の成長であり、全くのまやかしである。
3年以上も集大会・学習会等反対運動を続けてきたが、北海道はもちろん日本にとって「壊国」をもたらす交渉に対し、反対する国会議員や各界・各層、地域と連携し交渉を断念させるまで一層の運動強化を図って行くものである。
2.経営所得安定対策
自民党政権に代わり、農業者戸別所得補償制度を見直す事が検討された。
米のモデル事業を含め4年間実施された同制度を、現政権は当初よりバラマキと批判し、三党協議に応じる事なく先延ばししていた。
自民党は、産業政策である担い手を中心とした「所得政策」、地域政策として「多面的機能」の二本柱を持って経営所得安定対策を実施するとした。しかし、戸別所得補償制度は全ての農業者が対象であるが、生産調整に協力した者と、取り組まなかった者とに分かれた制度であり、生産現場としては、バラマキとは捉えておらず、一定の評価をしていた。現政権の経営所得安定対策は、担い手に対する施策としながらも、担い手の要件が曖昧であり、且つ、面で縛りが無ければバラマキと取られる施策である。
さらに、産業競争力会議農業分科会で、厳しい制度見直し案が提出された中、結果、米の定額支払い15,000円が見直され半減となり、残りの7,500円は水田活用や日本型直接支払に向けられた。また、畑作など各対策は、26年度において経過措置としてほぼ現行通り行うとし、法制化の後、27年度より完全移行するとした。
日本型直接支払は、組織が長年求めてきた多面的機能直接支払をやっと国が取り組んだことと評価しようとしたが、実際は農地水・環境保全支払に若干の変更を加えただけもので、総体予算の組み替えであり、組織が求めた予算の増額はならなかった。また組織としては、当初から農地維持支払は全額国費負担で行うことを求めていたが、結果は、今まで同様地方負担が発生することになった。国は地方交付税に増額しているとしたが、色分けされておらず、地方財政を考えれば非常に不安である。また、全ての農地を対象としながら、予算を見る限り当初から取り組みが増えないことを想定していた。
依然、都府県と北海道では単価の格差があり、これらを含め適正な制度となるよう運動しなければならない。
(1)米対策
産業競争力会議農業分科会では、米の生産数量目標の配分を3年後に廃止する見直し案が提出された。即座に、農水省ならびに自民党農林部会は「飼料用米の生産を拡大することで、主食用米の生産を一定範囲に抑制できる」として提案を受け入れ、生産数量目標配分を5年後に廃止することが検討された。しかし、新浪剛史主査(ローソン社長)の提案は企業参入を前提に、主食用米の自由な生産拡大と、それによる米の生産コストの低下が主眼であり、農業の継続ではなく産業としての競争が目的である。農水省や農林部会とはニュアンスが違っていたが、生産調整廃止では一致していた。
また、農水省は「需要に見合った生産を、生産者や団体主体の需給調整で行えば国が関与する生産調整は必要なくなる」とし、平成19年に生産者主体の需給システムへの移行を行ったが、過剰作付けが7万㌶以上となった経緯があるにも係わらず、同じ轍を踏む道を選んだとしか思えない。
今後、農水省は「需要に即した生産を推進するため、中食・外食等のニーズに応じた生産と安定取引の一層の推進、きめ細かい需給・価格情報、販売進捗、在庫情報の提供等の環境整備を進める」としているが、基本計画にある、食糧需給の安定と自給率向上は国の責務であることを重く受け止め、これからの制度設計に反映させなければならない。
さらに、米の定額支払いは平成30年産から廃止し、米価変動交付金については、平成26年産米より廃止となり、価格が下落した場合は収入減少影響緩和対策(ナラシ)で対応することとした。しかし、ナラシの補償基準は、過去5年間の中庸3年の販売価格の平均を使うので、価格が下がれば補償基準も低下する問題が発生し、大規模農家ほど打撃が大きくなる事が考えられるため、販売価格の平均ではなく、生産費に着目した補償基準の創設が重要である。国は、5年後をめどに収入保険制度の導入を検討しているが、農業者自らの拠出による保険制度を創ろうとしている。今までの農業被害を考えれば、自分たちだけで到底賄える訳はなく、国費を含めた担い手の経営に着目した、セーフティーネットの構築を求めなければならない。
(2)水田活用の直接支払
生産数量目標配分を5年後に廃止することを検討した「農林水産業・地域の活力創造会議」は、水田面積の確保と有効活用策として、飼料用米に着目し、主食用米の削減を模索した。
交付単価が見直され、飼料用米・米粉用米に対し最大で105,000円手当てし、さらに、多収米品種に取り組むことで12,000円手当てすることを制度の目玉とした。また、加工米に取り組み複数年契約(3年間)を結んだ場合、12,000円手当てするとした。そば・なたねについては、産地交付金で賄うようになった。
しかし、様々な検証を行ったが、国が示すような所得の確保はほぼ不可能であると判断せざるを得ず、北海道においては優良な飼料用米品種がなく、交雑や加工工場の問題など到底取り組める状況にはない。そば・なたねの扱いについても、はっきりしない点が多々あり、これらを追求しながら所得の減少が生じない制度の見直し等を求めていかなければならない。
(3)畑作対策
平成25年度は、畑作についても政権交代による制度見直しの中で、生産現場の混乱を来たさぬ様、予算措置として経過した。
本道畑作農業は輪作による連作障害回避が重要な作付け形態であるが、近年天候不順による収量、品質の低下が問題となっている。そのため排水対策の為の生産基盤の整備強化が重要な施策として必要である。
特に、てん菜においてはその影響が顕著であり、収量・糖度が大きく落ち込んでいる。実質的な手取り確保を図るため、基準糖度の見直しを求めてきたが今回16.3%の決定を見る事が出来た。
麦については、生産者と実需者との間でギャップが生じ、国産麦の取引が停滞している。春麦や秋麦の「ゆめちから」など、パン・中華麺用小麦がほとんど落札されていない。要因としては高齢化による労働力不足によるてん菜・馬鈴薯からの作付転換と、パン・中華麺用の加算措置をした国の誘導策による過剰作付、安定供給に対する実需の不安があり、国産麦の転換が進まないことが上げられる。
食料・農業・農村基本計画で、32年度までに生産量180万㌧の目標を掲げていることを踏まえ、内麦優先の原則に沿う出口対策(需要と販路確保)を講じなければならない。
現行の、畑作物の直接支払交付金は、今後対象者を見直し、27年度より法制化する事とした。いずれにせよ生産現場が混乱することなく、営農継続支払が当年産作付面積で算定されるよう、万全の対策を求めていく。
3.農地中間管理機構
産業競争力会議並びに規制改革委員会に於いて、農地の集積事業についての提言がなされた。今後10年間で農地の8割を担い手に集積し、効率的で大規模な経営体を作るとした。その担い手には自ら耕作する農業者だけではなく、企業の参入も認める方向で議論された。さらに産業競争力会議は、農業委員会について現状ではその機能を発揮していないとし、当初から委員会の排除を求めていたが、組織からも地域の現状を含め提言し、農水省もそれに答えるべく委員会の関与を拡大した。
農地中間管理機構法案は、昨年暮れに成立したが、適切な運用と、北海道において不当に企業が参入することなく、優良農地が適切に担い手に集積されるよう上部組織と共に運動を展開する。
4.酪農・畜産対策
昨年2月BSE対策で関係機関への説明会が開催された。今まで、国の検査対象は21ヶ月齢以上とされてきたが、国内において飼料規制やSRMの除去を柱とする対策がなされ、11年以上に渡り新たに生まれた牛に感染牛が無いことで、5月にはOIE【注3】(国際獣疫事務局)総会で日本が清浄国認定されることを踏まえ、これまでの検査態勢を見直すことを厚生労働省が打ち出した。
道としても様々な検証をしたが、北海道だけ継続することで他府県から批判されかねないことや、検査に係る道費の負担などから全頭検査を廃止した。しかし、確実に安全が保証されたわけでは無く、TPP関連で輸出を拡大したい米国からの強い圧力があったと報道されている。
北海道の酪畜は都府県から見ればその大多数が大規模経営農家であるが、配合飼料価格や、燃油価格の高騰、電気料金の値上げなど、生産コストの上昇が続き所得の低下を招いている。さらには、4月からの消費税増税が重荷となるだろう。また、乳製品を始めとする酪畜産物は、高関税で守られている品目なので、TPP交渉如何で大きな打撃を被ることは言うまでもない。
加工原料乳生産者補給金単価の確保、チーズ対策、酪農ヘルパーの充実など中長期的観点での対策を求めた。補給金単価は25銭値上げされ4年連続の引き上げとなったが、限度数量は3年連続で引き下げられた。さらに、チーズ単価についても15円41銭となった。また、チーズ向けの需要量を、需要見込み191万㌧からカレントアクセス【注4】輸入11万㌧を除いた量を交付対象とし、組織が長年求めた補給金にチーズ向け生乳が追加された事は大きな成果であり、また、本年より新たなヘルパー制度に倍額の予算が措置されたが、使い勝手の良い制度となるよう求めなければならない。
しかし、生産現場は依然厳しい経営環境であり、飼料用米の利用誘導策も含め十分な予算の確保と、安心して営農が継続できる制度の確立を求めて、一層の運動強化を図っていかなければならない。
5.野菜対策
野菜の生産現場は、近年の異常気象、生産資材・燃油の高騰などから非常に不安定な状況が続いている。さらに、価格の高騰、出荷量の減少が少しでも続けば、すぐ様輸入野菜が急増する基盤が市場に形成されて来ている。北海道が主産地である玉葱に於いても生育不良による取れ不足から、輸入量は増加している。
野菜生産の下支えとして欠かせない野菜価格安定制度は、平成26年度予算で167億円が措置されているが、制度自体は道費負担があるため道の財政状況が厳しい中、十分な活用がなされていないのが現状である。3年間の増量計画も、目標66万㌧に対し、62万㌧余り(達成率95%)と届かず、次期増量計画の策定と予算確保に課題が残っている。
農水省は今後すべての作物を対象とする収入保険制度の導入に向け調査・検討に入る為の予算を要求したが、現行制度との整合性をどう図るかが課題である。
今後も、安全・安心な国産野菜の需要拡大に向けた対策の強化や、野菜農家の所得確保に向けた制度の確立を求めていかなければならない。
Ⅲ.関連対策
1.税 対策
政府は昨年10月1日、翌年4月1日より消費税を8%へ引き上げることを閣議決定した。一昨年三党合意の下で成立させた消費税増税法案により、経済見通しで景気が上向いたと判断したためである。しかし、実態はどうであろうか、増税前の駆け込み需要による消費の増大と大都市圏での消費が上向いただけで、我々地方は景気回復の実感すらないのが現状である。
組織は消費税引き上げに際し、農畜産物は従来から消費税分を価格に転嫁しづらい取引実態であることを鑑み、生産資材価格が外税であるのなら農畜産物価格も外税表示し、適正な所得の確保がなされるよう運動して来た。さらには、平成26年度税制改正要望事項で、適用期限が到来する租税特別措置法の継続や、軽油引取税の恒久化や、農業経営基盤強化準備金制度の拡充強化などを求めて来た。
翌年秋には、10%に増税されるであろうし、軽減税率導入など様々な問題が山積している、税政策と農業政策は一体の重要な組織運動であり、継続して要請を続けることが肝要である。
また、所得税申告等について、税務当局より厳しい指摘が多く見受けられるが、上部組織や関係団体と問題を共有しながら、盟友の適正申告について、市町組織と連携強化を図っていく。
2.生産資材対策
国内・国外情勢が直接反映されるのが、生産資材に係る大きな問題である。北アフリカ・中東情勢が非常に不安定の中、先進国の景気低迷を横目に新興国の成長は著しく、化石燃料への依存を増大させている。そうした原油価格高騰に輪をかけるように昨今の円安が拍車を掛け、燃油はもとより、肥料、飼料などの生産資材費はさらに値上がりすることが懸念され、現在の円安基調がいつまで続くかも不安要素である。さらには、近年の異常気象は、様相が特異であり局所での発生が多くなっている様に思われる。日本ではほとんど見られなかった竜巻なども顕著になって来ており、被害が出れば莫大な金額が予想される。
近年、緩やかな価格上昇に無頓着になっていたが、確実に農業所得が減っていく中で、簡単に価格にコスト増加分を、上乗せ出来無い産業構造を踏まえ、効果的な恒久対策の構築を継続して求めていかなければならない。
Ⅳ.組織対策
我々を取り巻く農業情勢は「猫の目農政」と言われ続けてきたが、変革の動きは加速度が増し、制度変化がさらに激しさを増している。
新食糧法が制定され、価格闘争から政策提言運動へと変遷し、20年余りが経過した。与党自民党の農業政策は、過去も未来も国際競争力強化の為には、はたまた高効率コスト低減のためには、大規模経営が必要であるとして、政策誘導してきた。しかし、規模拡大を続ければ、農家戸数の減少は避けては通れない問題であった。
結果として、地域においては後継者不在のため、高齢によるリタイヤが後を絶たず、耕作放棄地を増やさない様に努力した事で規模拡大が進み、大型農業経営が増えていった。こうした現状から、作る自由、売る自由を盾に、生産者団体からさえも脱退が生じるなど、経営規模が大きくなるほど、組織など不要に思う生産者が増えることにやるせなさが募る。
各市町組織の盟友減少は、これらの様々な要因で歯止めがかからず、財政面でも逼迫しているのは現実であろう。そのことにより、十分な農政運動が行えないようでは支えてくれている盟友に対して顔向けできない。
しかし考えて見れば、今まで国が示した制度・政策だけで十分農家が潤っていただろうか、組織運動なくしては農業経営が担保されなかったことであろう。
運動の成果は盟友個々にはなかなか見えづらいが、確実に生産現場の声を政策に反映させてきたという事実もあり、そうした運動のあり方について盟友に理解を求めなければならない。
したがって、市町組織と一層の連携強化を図りながら、上部組織の道農連を中心に、他組織・団体とも連携し、強力な運動を構築していかなければならない。
Ⅴ.農民政治力
先の衆議院議員総選挙で、3年3ヶ月続いた民主党政権から再び自民党政権へと舞い戻った。しかも今回の政権交代後、昨年7月に行われた第23回参議院議員通常選挙で、国民の民主党アレルギーを要因とし、「何となく自民党」というムードを背景に結果自民党が圧勝し、衆参国会のねじれを解消した。自公連立政権は継承され、参議院では絶対安定多数の135議席を確保し、衆議院では議席が3分の2以上を占める安定政権へとなった。
結果を振り返ると、民主王国とも言われた北海道では多くの議席が若い自民党議員と入れ替わり、空知を中心とする10区選挙区でも我々農業者の代表の議席も失った。
安倍首相を中心とする与党政権は、財界偏重であり、非常に右傾化した考えが強いが、世論調査による支持率は依然高いままであり、長期政権化は否めないであろう。
そうした中、我々組織は運動の原則である「農業生産者の利益を創造し、社会的・経済的地位を高める」ための、農業政策確立を目指す上で重要な役割を果たすのが政治力であることから、「如何なる立場からも支配と拘束を受けない」とする意思機関として一党一派に囚われることなく与野党問わず政治力を最大限利用し運動を進めなければならない。
今後も、空知農民政治力結集連絡会議や北海道農民政治力会議と連携を図りながら、盟友に理解と協力のもと、政治力の結集に取り組んで行かなければならない。
【注1】ISD条項 ⇒ 多国間における企業(投資家)と政府との、賠償を求める紛争の方法を定めた条項のこと。主に、自由貿易協定を結んだ国同士において、投資相手国の規制などにより、企業や投資家が損害を被った時に賠償を求める手続き方法として用いられるが、その他さまざまなケースで同条項を基にした仲裁がなされている。
【注2】TPA ⇒ 米国が他国と結んだ通商協定について、大統領が議会に修正を許さず、批准に賛成か反対かだけを問える権限。政府が通商交渉を進めやすくなるため、「追い越し車線」とも呼ばれるが、相対的に影響力が下がる議会の反発から2007年に失効した。
【注3】OIE ⇒ 家畜の国際的な安全基準を決める機関。本部はパリ。1924年設立。2013年5月現在178カ国が加盟。日本は1930年に加盟した。世界各国での家畜の伝染病の発生状況などを調査し、拡大を防ぐための研究や衛生基準などをつくっている。
【注4】カレントアクセス輸入 ⇒ URで関税化された農産物で基準期間(1986~1988年)に国内生産量に対する平均輸入数量が3~5%以上あったものは、その平均輸入数量を維持することが合意された。わが国は平成7年度以降、毎年度、生乳換算で137千トンの指定乳製品等を輸入することとなったが、これをカレントアクセス輸入という。