農水省では、2014年度から農業経営の安定のための新たなセーフティーネットとして、収入保険制度の導入に向け調査・検討を進めているが、今回その調査を実際に行い政策立案を担当する立場にある総括上席研究官と意見交換を行った。
最初に今回の制度の前提となっている米国の収入保険制度について説明がなされた。米国の収入保険制度の特徴として、
〇加入者は保険料の支払いが原則、収量・価格が一定量下がった場合に支払われる仕組み。収量の減少と価格の低下の両方を保証する仕組みであり、政府の助成もある。(助成はWTO協定でも認められている)
〇各国の保険の必要性は、金融機関から営農資金を借りる際に担保として機能されている。(米国・カナダでも保険に入ってないとお金が借りられない状況。)
〇保険加入の場合、代理店を通さなければ入れない。代理店同士の奪い合いも発生している。(農業保険だけの会社でなく、大会社間の争い)
〇損害評価も、独立した認定員1人が圃場を見ることになっている。(書面や倉庫調査など)
〇すべて任意加入で、作物保険・収入保険を自由に選択出来るが、同作物で両方加入は出来ない。作物保険は、災害によって収量が減少した場合に保証され、日本より対象作物が多い(野菜や牧草も対象)。
収入保険は、収量減少・価格の低下など収入の減少に着目した保証で、米国では対象は主要農産物で、先物価格(作付時期の予想価格)を使って保証する。作物によって、農家の個人のデータ、地域のデータに基づき保証する。また、税申告書の基づき、1つの保険で加入者の全農産物から農業収入の変動を保障する経営単位の収入保険(AGR)もある。
〇AGRは納税申告が原則で、7年間継続して農業所得を申告している(例外あり)ことなどの条件もある。他の保険に入っており、足りない分をAGRで補うというやり方も多い。加入者は、保証水準と支払率の組み合わせを選択するが、保証水準は65%、75%、80%(80%を選択する場合は3種類以上の農産物生産が条件)
●両保険とも、掛け金の無事戻しは一切ない(掛け捨てが基本)。地域によって掛け金が変わってくる場合もある。
●今後の課題として、共済組合加入との整合性の問題があるが、今現在でどうするかは未定である。
●保険はあくまでリスク管理の方法であるため、TPPの影響などで価格が下がり続けた場合などは保険だけでは減少分を賄えない。米国でも、国の施策と組み合わせる形を取っており国の補助が必要になってくる。