★研修地概要について
東串良町は鹿児島県の大隅半島に位置し、耕地面積が水田841ha、畑地596haと温暖な気象条件のもと施設園芸をはじめ、土地を生かした畜産と水稲を基幹作物とした営農が展開されており、農業粗生産額はピーマンの20億1千万円、肉用牛16億4千万円、大根が12億3千万円、胡瓜も同程度の12億1千万円で、水稲は3億1千万円の生産額であり、ほかキャベツ、さつまいも、乳牛、豚、馬鈴薯など、粗生産額は81億1千万円(平成25年)とのこと。
中でも水田活用における耕畜連携への取り組みにいたる経緯については、水田の大区画整備事業を契機に、ブロックローテーションを導入し、様々な作物の定着を試みてきたものの設備投資などの問題により定着が困難な状況にあった最中、平成12年の中国産稲わらを原因とする口蹄疫が宮崎県で発症したことから、国産稲わらの確保の必要性が高まりWCS用稲(わら専用稲)を60a作付けしたことが始まりで、以降、水田活用の直接支払交付金による推進、特に耕種農家による作付けの推進を図り、畜産農家へ流通させるなど、水田輪作の転作作物として良質なWCS用稲の生産に取り組んできた結果、平成16年度に2,491aだった作付けが平成25年度には25,726aまで拡大したとのことであった。
しかしながらWCS用稲の作付面積は年々増加傾向にあったものの、裏腹に牛の頭数は平成21年度には肉用牛(繁殖・肥育)、乳用牛の合計頭数が5,625頭で平成25年度には4,967頭となり減少傾向で推移していることから、東串良町内だけで見れば供給過剰状態となり、こうした事態から町ではコントラクター組織として生産組合を設立し、飼料増産による安定的な粗飼料供給システムを構築し、町外も視野に需要拡大に向けた取り組みを現状進めているとのことであった。
★WCS用稲の作付品種について
・ミナミユタカ(モーれつ)
@出穂後の全長は110cm程度になる長かん種である。
A多収性で収穫後の乾燥にやや時間がかかるが、倒伏しにくい。
B宮崎県が「モーれつ」にγ線照射し、突然変異による難脱粒化した品種であ り、脱粒しにくい以外は、「モーれつ」と変わらない品種である。
・タチアオバ
@出穂後の全長は107cm程度になる長かん種である。
A多収性で収穫後の乾燥にやや時間がかかるが、倒伏しにくい。
Bワラも含めたホールクロップ収量が非常に多収でサイレージ用として低コス トで生産できる。
・ルリアオバ
@出穂後の全長は200cm程度になる長かん種である。
A多収性で、2回刈りに向く品種である。
Bタポルリを品種改良し、難脱粒化した品種でる。
★主な懇談内容について
◇飼料米作付けの取り組み状況については?
◆WCS用稲については当初から8万円の補助金があり経費も考えると有利とのことで進んで取り組んできた。しかし、今、国の方針によって飼料米についても補助金が増えたことから作付け検討をしている。しかし、コンタミ防止の観点から専用の施設や機械の導入が必要となり、経費負担もあるのでなかなか前に進んでいない。飼料メーカーからは要望もあるがハッキリとした話し合いができていないのが実態。
◇需要拡大への取り組み状況については?
◆WCS用稲の作付けに対する補助金8万円があり、作付けが増加してきたことで需要バランスが崩れてきており町外の畜産農家へも販売していくため、コントラクター事業も取り入れ促進を図っている。
◇WCS用稲については直播もあるのか?(直播の機械は?)
◆専用の機械が無くブロードキャスターや無人ヘリなど色々試しているが、何れ にし ても技術体系が確立されていないことから基本的には認めてない。単なる 手抜き的な バラマキでは、移植など手間を掛けるからこその補助金8万円だと 考えるとそれに見 合うものでないことから、粗放作り(捨て作り)と見なされ 補助金対象としないとの方 針。また、初期の生育不良でジャンボタニシによる 被害も発生している。
◇一戸あたりの作付け面積は?
◆作付け戸数は500戸ほどで、平均すると50a程度で少ない人は10a程度から多い人は8ha位の作付け者もいる。
◇作付け者は専業or兼業?
◆殆どが兼業農家である。(サラリーマン農家)
◇WCS用稲の作付けで採算はとれているのか?(特に輸送コストなど)
◆現状では東串良町近郊が供給主体で輸送範囲は時間にして20分程度であり、 輸送コストを含めた価格設定で賄えている。
◇WCS用稲の収量・単価は?
◆10aあたり1000kg~1200kg位で、水分15%で単価37円/kg(輸送コ スト含む)
◇飼料米で最高額を得るための基準となる水稲(主食用米)の平均収量はどれくら いか?
◆10aあたり460kg位で10万5千円を貰うにはプラス150kgが必要とされる。
今年の主食用米の価格が5000円/半俵であったことから、来年はWCS用稲の作付けが更に増加することも予想される中、すでに町内では処理できない現状で、隣町など販売拡大するにしてもあまり遠方では輸送コストが負担になることから望ましくない。そうしたことを考えると今後、飼料米への取り組みは大きな要素となるだろう。しかし、新たな投資が必要となることから、需要はあると言われるがしっかり飼料会社や町など関係機関で話し合いをしていくことになる。飼料米への取り組みでは皆さんの地域と同じスタートラインに着いたばかりだと思う。
★現地視察について(予定に変更あり)
小雨の降る中。大型バスが走るには道が狭すぎるとのことで、肉用牛50頭を肥育し飼料米20haを作付している農家夫妻が、わざわざ牛の品評会を行う場所まで軽トラに2つロールを積んできてくれた。一つは通常の刈り取り、乾燥巻の作業工程でロールにされたもので、もう一つが1200万円で購入した刈取りから巻取りまでが一連でできる専用機でロールにしたものだ。通常の場合は、数日かかる作業工程を考え、直近の雨予報に神経を使いながらの作業となるが、専用機の場合は、雨が降る直前まで作業ができることから、水分含量も勘案しながら収穫作業が出来、発酵を促進できる利点があるとのことであった。自家消費分以外は、再三組合に収め販売されるとのこと。